卓上フライス盤コラム補強


概要

卓上フライス盤のコラムに補強を施す事により,コラムの剛性UPが計られ,加工能力を上げます


対象

SIEG社が製造している卓上フライス盤X2相当のフライス盤各種
(コラムが±45°傾斜可能な構造になっている)
多分以下の機種が該当します
スリースのMILL350
ヤフオクで出回っている"X2", "XJ9512"という型番のフライス
海外組ではGrizzlyのmini-millとかも該当するんじゃないですかね

ちなみに形が似ててもコラムがアルミ合金製の物はこの補強の他にもコラム自体の補強が必要かもしれないです (SIEG社の物は鋳鉄製コラム)


構造

この手のフライス盤はコラム部分の構造が下図の様になっています


ベースの上にイケール(図ではBRACEと記入)がM10の六角穴付きボルト3本で固定されており,そこにシャフトが嵌められている
シャフトとワッシャー,ナットによりピボットとコラムを共締めにしている

これでナットを緩めればコラムを傾ける事が出来るわけですが,それが仇となってコラムの剛性が低くなっています

イケールから突き出たシャフトにコラムを付けているので片持ち梁の状態になっています


力学的なお話

力学的には,梁の最大たわみδmax

で表されます
βは梁のたわみ係数,Wは荷重,lは梁の長さ,Eは縦弾性係数,Iは断面二次モーメントを表しています
βの値は梁の構造により変わり,片持ち梁の場合1/3,単純支持梁の場合1/48となります
つまり,シャフトを両側から支えてやる事で,構造が片持ち梁から単純支持梁になり剛性を上げる事ができます
もっともかなりいい加減なモデル化(荷重のかかり方とか支持部分が剛体じゃないとか)なので,理論上はたわみが16倍少なくなる計算ですが実際はもっと少ないでしょうけど


補強方法案

このことはかなり前からネット上で見かけられ,様々な方法で補強が行われています
とりあえず3案ほど検討を行ってみました

案1

ベースの背面にボルト穴を追加工し,そこに補強板を固定する方法
こちらで行われた方法です

案2

ベースを固定するボルト穴を使用して"ゲタ"をはかせ,ゲタに補強板を固定する方法
こちらで行われた方法です

案3

ベースの上面にボルト穴を追加工しそこに補強板を固定する方法
2ちゃんねる"★ホビー★ ミニ工作機械 Part3 ★趣味★"スレにて報告された方法です(現在はDAT落ち)

それぞれの利点・欠点を独断と偏見でまとめてみました
1. 本体の追加工難易度
 案1:×.ベース側面を平らに削り,そこにネジを切る.物が大きいだけにボール盤での穴あけが困難
 案2:○.補強部材の加工のみでボルトオンで固定可能.ベースへの追加工は無し
 案3:△.ベース上面を平らに削り,そこにネジを切る.平らに削らないでシムだけで対応も可
2. 材料費
 案1:○.3つの案の中では一番少ない
 案2:×.ゲタは後ろだけでなく前にもはかせなくてはいけないので3案の中では一番多くなる
 案3:△.構造上コラムのかさ上げが前提になるのでその分材料が多くなる.元からかさ上げするつもりなら○
3. 固定強度
 案1:△.ベースの背面の厚みはせいぜい5mm程度.固定個所も2個所が限度
 案2:○.ゲタにがっちりと固定が可能
 案3:△.ベースの上面の厚みも5mm程度.かさ上げ用のブロックにも固定すれば多少は強くなる?

どの要素を取るかによって方法を選択すればいいと思います
うちでは材料が一番少なくて済む案1でやりました


加工と設計

普通は設計してから加工を行うものですが,諸般の事情でまずはベースの加工から行いました

@加工面のチル落とし

鋳鉄表面の硬くなった部分で,加工時にエンドミルが痛まないようにヤスリで表面を削ります
平らに出来る自信があったり,他の工作機械が無ければこのままネジ穴あけてもいいと思います

Aフライス加工

フライスで表面を軽くさらい,端面を出します
無くてもいいかもしれませんが,やった方が補強板との結合が強くなるでしょう

Bネジ穴加工

ボール盤で下穴をあけてからネジ穴を切ります
でかいボール盤が無い場合は先ほどの3案にするかハンドドリルで頑張るしかないでしょう


これでベースへの追加工は完了です


次に補強板の設計をします
一体型の削り出しがベスト,ダメなら2パーツを溶接がいいんでしょうがどちらも現実味がなかったので2パーツをネジで固定する方法にしました


補強板です
材料はS45C


コラムとベースの段差を埋めるスペーサです
これも材料はS45C


補強板の分,シャフトを長くしなければいけないのでシャフトも作り直します
同じくS45C


部品3点とネジ4本です


組み上げるとこうなります
諸般の事情によりどの程度強まったかはまだ測定していません
こちらはおいおい追加していきます

※2007/06/09 追記
作業していて気になった事を一つ
実際に加工をしてみてY方向の加工では断然強くなった感がありますがX方向の加工ではワークに刃が食い込んで停止する現象が出るようになりました
推測ですが後ろの補強板とコラムを共締めしているわけですが補強板が頑丈すぎてコラムまでナットを締めた力が伝わりにくいのではないかと(X方向にヘッドが傾きやすくなっている)
解決策としては補強板とコラムを直接ボルトで固定してやる,というのがまず考えられます
余裕がある時にやってみようと思います